

音楽監督・大野和士 60歳。
東京都交響楽団 音楽監督


音楽監督・大野和士 60歳。
東京都交響楽団 音楽監督
© T.Tairadate
音楽監督 大野和士が、2020年3月の定期演奏会で演奏されるブリテン:春の交響曲を語ります。
第2次世界大戦によって荒廃した世界からの復興、復活をする人々のために交響曲を書きたいという思いから作られた本作。
自然が芽吹き、生物が息づき、人々が復活を遂げるというテーマに沿って、ブリテンが英国の詩人たちによる12編の詩を紡ぐことで、伝えたかったこととは…。
大野自らピアノを弾くだけでなく、歌も交えながら解説します。
取材・文/奥田佳道
3月4日のB定期当日、都響音楽監督・大野和士は60歳の誕生日を迎えます。演奏会に向けて大野和士がブリテン《春の交響曲》について大いに語り、歌い、ピアノを弾いた動画収録の模様をお届けします。

ブリテン作品がもつ強いメッセージ
熱き知将・大野和士は、みずからの誕生日を勝負曲《春の交響曲》で寿ぐ。語り口は、いつも以上に滑らかだ。まずはブリテン芸術への想いから。
「私がベンジャミン・ブリテン(1913~76)に魅了されるのは、彼が人の個人的な営みとか、愚かさに目を向けた作曲家だからです。社会から疎外されてしまった人々、戦争の悲惨さ、残酷さ、不条理に対する強いメッセージがありますよね。ええ、告発も。オペラ『ピーター・グライムズ』や《戦争レクイエム》を挙げるまでもありません。そうした発信を極めてパーソナルな立場から行ったところがまた素晴らしい。
端的に申せば、いえ、これが一番大事なところですが、マイノリティへの眼差しをもった作曲家です。実は同じことがヴェルディにも言えます。ヴェルディのオペラにも、ヨーロッパ白人社会におけるマイノリティ、差別された側の人間が主役として登場するでしょう。リゴレット、ヴィオレッタ、アイーダ、オテッロ……。圧倒的な音楽が書かれていますが、みんなマイノリティです」

春の交響曲

ベンジャミン・ブリテン(1913-76)
2020年3月4日(水) 19:00開演(18:20開場)
サントリーホール
チケット購入
公演中止
指揮/大野和士
ソプラノ/中村恵理
メゾソプラノ/清水華澄
テノール/トピ・レティプー
児童合唱/東京少年少女合唱隊
合唱/新国立劇場合唱団
ベルリオーズ:歌劇『ベアトリスとベネディクト』序曲
ドビュッシー:舞踊詩《遊戯》
ブリテン:春の交響曲 op.44